ルートを買ったら最初にやるべき6つのこと。その6 ハブの調整

6.前後ハブのグリスアップと調整
 難易度 ★★


ぽんたです。後先考えずぶち上げたこのシリーズも、ようやく最後の6番目。前後ハブのグリスアップと調整です。




必要なもの
  • ハブコーンレンチ 13mm 15mm(薄型スパナでも可)
  • モンキーレンチの類
  • ボスフリー抜き専用工具
  • 汎用グリス
  • パーツクリーナー(あれば)
  • ウェス(キッチンペーパーなどでも可)
ルートのハブの回転部(ベアリング)はカップアンドコーン式と呼ばれる構造で、ママチャリなど一般車でもお馴染みの仕組みです。




別のハブ(シマノ600)で申し訳ありませんが、クローズアップで撮ってみました。グリスとダストキャップなしの状態です。




通常こんな感じで回転部を支えています。この部分のグリスが枯れていたり、ベアリング球の押しつけ具合が適切でないと、たちまち回らないホイールになってしまうワケです。

なので、分解してキレイにしてグリスを詰めなおし、クルクル気持ちよく回るようにハブの調整してみようと思います。

フロントホイール



最初はフロントホイールです。すでにフォークから取り外してある状態です。まずはロックナットと玉押しを外します。




このタイプの場合、薄型レンチを使う必要はなく、モンキーなどで回せばOKです。玉押し部分には13mmのハブコーンレンチを使います。ここも汎用薄型スパナで回せる厚みがありますが、せっかくなので自転車用の工具を使います。




双方とも外れたら、反対側から軸ごと抜いてしまいます。




樹脂製の黒いキャップはただはまっているだけなので、棒のようなものでクイッとやれば取れます。(固い場合は無理に取り外さなくともOK)




内部には意外にも(失礼)しっかりとグリスが入っていました。半固形のような、かなり硬めのグリスです。ピンセットを使ってベアリング球を取り出すと、3/16インチ球、片側10個、合計20個ありました。




ウェスやパーツクリーナーを使ってグリスを落とします。購入して間もない新品同様のホイールということもあり、このグリス自体はほとんど劣化していないのですが、後から新たなグリスを盛る予定なので、ここではとりあえず落としてしまいます。




ベアリング球は行方不明に注意しましょう。転がりやすいのはもちろんのこと、グリスと一緒にどこかに引っ付いたりして、気が付くと足りなくなっていることがあります。

本来ベアリング球は左右を混ぜてしまわず、右に入っていたものは右に、左のものは左にと、入っていた元の位置に戻したほうが調整後の回転がスムーズになります。今回は新品同様のハブなので、あんまり関係ないかなと思って混ぜちゃいました。

つづいて玉受けのグリスもふき取っていきますが、なにやら赤茶色のものが見えたような……




さ、錆びているだと?!
錆びてました。ほぼ新品なのに。反対側の玉受けも。……。

先ほどのグリスの初期封入量からすれば、組み付け後に錆びが発生したとは考えにくい部分です。

ハブとして組み立てられる前のハブシェル単体の時点で、すでにこの部分に錆が出ていたのでしょうかね。

見なかったことにしよう……。というわけにもいかないので、ルーターに金属ブラシのビットを付けてひと通り錆びを削ぎ落としたあと、フェルトのビットとピカールで磨いてみました。



黒い痕は完全には消えないものの、指で撫でた感触は断然滑らかになりました。同じように反対側の玉受けも錆びを落としたら、グリスをたっぷり付けて組み戻します。




使用するのはホムセンのグリス売り場でもお馴染み、エーゼット 万能グリスです。ずいぶん前に買ったものなんですけど、なかなか使い切れずにいます。コイツをモリモリ盛っていきます。




ハブの玉受けにグリスの敷布団を敷いたら、1個づつ計10個のベアリング球を置き、その上からグリスの掛布団で覆います。

樹脂キャップを戻してハブ軸を挿し入れたら、くるりと反対側へひっくり返します。こちらもベアリング球をグリスでサンドイッチして、キャップ、球押し、ロックナットを戻します。




ナットを手で軽く締めたら前輪はいったん完了。玉当たりの調整は、後輪といっしょに後からまとめてやることにします。

リアホイール



続いてリアホイールです。まずはスプロケットを外さなくてはいけません。ここはボスフリー抜きの専用工具が必要になります。

今回使うのはシマノのTL-FW30です。他メーカーの工具でも同等品なら大丈夫。現行シマノ製品と互換性のあるものを用意しましょう。




カセットスプロケットを外すときと違い、ボスフリーの場合はギアを押さえておく必要はなく、ホイールを持ってフリー抜きを左に回せばOKです。




スプロケットを外したら、前輪の時と同様、ハブのロックナットと玉押しを外します。左側(スプロケットの反対側)を外すほうがいいでしょう。玉押しには15mmのハブコーンレンチを使います。




後ハブにもそれなりにグリスが入っていました。




すべて外したら前ハブと同じようにグリスを落とします。後ハブに使われているベアリング球は、1/4インチ球、片側9個、合計18個です。

リアハブは錆びてないよね……?




錆びてるじゃないか! ふたたびホビールーターにご登場願いまして、ざっと錆びを落として磨いたら、前輪と同じようにグリスを盛って組み戻します。





すべて取り付けなおして仮締めで完了です。

玉当たりの調整



さあ、いよいよ最後の工程です。実はこの玉当たりの調整作業こそが、今回のメインイベントと言っても過言ではありません。

玉押しとロックナットに工具を掛けて、微妙に緩めては締めて確認、緩めては締めて確認。この手順を繰り返しながら、ガタもゴリもなくスルスルと回る状態を目指します。

こんな工具を使うとだいぶ違うようなんですが、あいにく持っていません。




ハブアクスルバイスという工具です。ハブ軸が供回りしないので調整がラクになるとか。今回のように精度の悪いハブを調整するときには重宝する工具のようです。もちろんこれがなくても大丈夫。

BBの時と同様、製品の質の低さゆえに完璧な状態までもっていくのは難しいところですが、やはりここでもガタよりはゴリ。ジャストの位置が見つかればもちろんそこで固定しますが、どうやっても決まらない場合には、ほんのわずか気持ちだけゴリ寄りで調整・固定します。

あとは適度なところで妥協するのも方法です。それでもハブの調整をする前よりはずいぶんよく回るようになっているんじゃないでしょうか。

なお、新品同様の状態から今回の作業を行った場合、当たりが付いてから微妙なガタが出ることがあるので、定期的なガタのチェックをオススメします。ガタが生じているようなら再度調整してください。

それはちょっとメンドイなぁという向きには、新車の時点では今回のような作業は行わず、渋さは気にせずそのまま乗るという手もあります。ベアリングの当たりが付けば回転も多少は良くなるハズです。その場合でも、ある程度の距離を走った時点でグリスアップと玉当たり調整を行うほうが良いでしょう。製品寿命が延びますからね。

ということでついに全6回終了しました!あとは乗るだけ!

10 件のコメント :

  1. こんにちは、ぽんたさん

    こちらの記事や他サイト様の記事を参考にしてメトロとルートのハブベアリングの分解・グリスアップをいたしました。

    その他には、メトロに関してはヘッドパーツ(リテーナー)のグリスアップと清掃、フロントフォークとハンドルポスト部分の締め付け調節を行い、ルートに関してはスプロケットとシフター(7速)の変更、シートポストシム内側に対するグリスアップを行いました。

    ハブのグリスアップに関してですが、メトロのハブ軸に装着されているシーリングが外せず、変形または破損する恐れもあったため無理に取り外しを行わず、シーリングを装着した状態で一連の作業を行いました。その過程でカップ内部に髪の毛のような異物が混入しているのを見つけ、また後輪側の玉押しの一部分・箇所に虫食いを見つけました。

    ルートに関しては、上記のようなことはありませんでしたが、後輪側のベアリング(1/4)が1個足りず、こういうことも想定して予め購入しておいた新品のベアリングを追加しました。時として、ベアリングの数が足りないケースもある件は複数のサイトで報告されていますよね。

    そこで今、メトロの後輪側のシーリングの予備の確保と玉押しの交換をしてみようと考えているところです。ちなみに後輪側のハブ軸の直径は3/8のようですが、簡易なノギスで測ったところでは9ミリでした。

    そこでご質問なのですが、シマノから提供されているようなパーツを使用できれば良いのですが、ハブのメーカー・製品による個々の形状の違いがあるでしょうから、やはり純正パーツを確保する必要があるのでしょうか?できればシーリングや玉押しをパーツとして入手できれば最も経済的なのですが、予想では、ハブ本体または完組ホイールの購入しか認められないような気がしています・・・。

    また難しいのは、一口にメトロと言っても製造年による仕様変更があることです。大きな変更と言えば、当方のメトロはアヘッド式なのですがスレッド式も混在しています。こういうような変更によって部品探しも難航するかもしれません。

    なお、ルートの7速化は、一応7速ではありますが、スプロケットとシフターのセット販売品を購入した際に歯数を見間違え、14-28Tのスプロケットを購入してしまいました(笑)ただ歯の数が増えただけです。

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    1. 座敷犬さん、こんにちは!
      整備お疲れ様です!やはりきちんと維持・整備された自転車というのは良いものですね。乗っていても気持ちがいいですもんね。

      シールリングと玉押しに関してですが、純正品の予備を入手するのは難しいと思います。おっしゃるとおり年式によっても使われているパーツが違いますし、運良くオークション等で同型品を発見するようなことでもない限り、ちょっと無理でしょう。

      シマノの玉押しはねじがミリ規格なので、インチ規格であるルートやメトロの純正ハブ軸には取り付けできません。アマゾンなどで中国製の安価な軸組みセットが売られており、それらはインチ規格の玉押しのようなので、ねじの規格は適合しますが、ツバの形状やコーンの厚みなどの違いで、使えない可能性もあります。試してみる価値はありますが、無駄になるかもしれません。

      結局のところ、純正のハブに問題が出たら、やはりハブごと、あるいはホイールごと交換するのが早道だと思います。販売代理店であるアキボウに補修部品の有無を問い合わせてみるのも手ですが、数年前のモデルとなると残っていないかもしれませんね。あとは、虫食いの程度が軽い場合には、虫の食った玉押しを軸と一緒にドリルチャックで咥えて、回転させながら研磨するという最後の手段もあります。ハブでは経験がないのですが、ペダルの虫食い玉押しに対してやったことがあります。

      それから、ルートの7速化おめでとうございます!6速とギアレンジが同じでも、間に1枚増えることでギアのつながりも良くなりますし、あながち悪くない選択じゃないでしょうか。7速14-28Tは街乗りには良いスプロケだと思います。

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  2. レス有難うございます。
    とても参考になりました。

    やはり玉押し単体の入手は難しいようですね。

    先日、近場にある某オーソライズドディーラーにて相談をしましたが、ぽんたさんのような明快な回答は得られませんでした。

    ダメもとで販売代理店に相談してみますが、そもそもハブ単品そのものが安価な商品でしょうから、シマノのように補修用のスモールパーツとして玉押し等は用意されていない可能性がありますね。故障・破損すればユニットごと交換するような性質の商品なのかもしれないと想像しております。

    7速化に関しては、そのように仰って頂ければ気分が救われます。車体購入当時から装着されていたスプロケットは「うねり」があり、更には特定の段で「コツン」というような異音が発生していたため何にせよ、交換を検討しておりました。うねりはかなり解消されましたが多少は残り、異音のほうは無くなりました。もしかするとハブそのものにも何かあるのかもしれません。

    改造というような大それたことは到底出来そうにありませんが、ノーマルまたはそれから大きく逸脱しない範囲内(引き返せる範囲内)でこれからも保守・点検していければと思っております(笑)

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    1. 確かに今どきの工業製品はASSYでの交換が主流になってますし、シマノのようにスモールパーツ1個からバラ売りしているようなメーカーは、むしろ希少な存在なのかもしれませんね。

      スプロケのうねりは、これはもうある程度は仕方のないことのようです。とくにボスフリーではそのようですね。

      改造に関しては実は私もちょっと弱気な面がありまして、不可逆的な加工にはどうしても二の足を踏んでしまいます。いざとなったら元に戻せるような状態に留めておきたいと言いますか……。腕に自信がないということもありますが、まあこれも性格ですかね(笑)ネットでいろいろな改造例を見て回ると、実用重視のカスタムもあれば、ド派手なカスタムもあったりと、個性が如実に表れていて面白いです。

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  3. こんばんは、ぽんたさん

    ハブ・玉押しの件ですが、販売代理店としてはハブ単体や各部品の販売は行っていないとの回答でした。あくまでも完組ホイールのみの販売で対応するとのことです。

    そこで前後ホイールセットの中古品をネットで見つけ、購入いたしました。F74mm、R120mmとの商品説明でしたが、ホイールのデザインやスポークの組み方からしてメトロ・ルート用であろうと予想いたしました。念のため、販売店にリア側のO.L.Dに関して質問をいたしましたが、「120mmです」との回答でした。

    当方のルートのリアホイールは、反スプロケット側のフレーム内側箇所に関しては、「玉押し~厚みのあるロックナット」という部品構成ですが、ぽんたさんがお持ちのルートの純正ホイールの画像を拝見いたしますと「玉押し~スペーサー~薄いロックナット」という順番になっており、当方が購入したホイールも同様の構造でした。ただし、現状では玉押し~薄いロックナットの順番になっており、スペーサーはスプロケット側に移動させられていました。おそらくスペーサーを計算に入れず、120mmという数値を商品ページに掲載していたものと思われます・・・。

    今回の件で近所の自転車店および特約店にも問い合わせをいたしましたが、何れも「玉押しってなあに?」というような対応で、ハブの構造から説明せざるを得ない状況でした。ネットで情報を得て、ネットで部品を購入し、つまりはネットが無ければお手上げだったと思われます。

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    1. 座敷犬さん、こんばんは!

      やはり販売代理店は完組ホイールのみの提供でしたか。それでも良さそうな中古ホイールを入手されたようで何よりです。望みの条件に合った中古を探すのは、なかなか骨の折れる作業ですよね。

      ひとくちに自転車店と言ってもピンキリですねぇホント。売りに出しているホイールの寸法すらいい加減とは…。私もネット上の自転車情報には大いに助けられております。自転車を自分でいじって直そうという向きには良い時代になりましたね。というかネットがなければ自転車を改造しようなどという気にはならなかったかもしれません。素人作業が原因のトラブルや危険が増えたという指摘も一部あるようですが、自分でやることで自転車の仕組みも理解できるし、この部分を見逃すと危ないというようなことも分かるので、やはりメリットは大きいと思います。

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    2. 当方としましても、ネット情報が無ければ自分であれこれ考えたり修理しようとは思わなかったと思います。身近に、この方面に詳しい人もおりませんし・・・。

      ハブ・玉押しに関しては、今でも安価な自転車はカップ&コーン式を採用しているとのことでしたので、ここまで苦戦するとは思っておりませんでした。実際、シマノ以外にもハブ軸や玉押しを製造している日本の会社もあります。ゆえに昔ながらの自転車店であれば玉押しの在庫があるかもしれず、いくつか見繕ってもらって購入して、現物合わせをすれば何とかなるかも、と軽く考えておりました。基本的な事柄として、まさか玉押し・虫食いという用語が通用しないとは、想像すらしておりませんでした。

      ところで、前述しましたように7速化をしましたが、BBの軸長(ノーマル113mm)から例えば118mmというように変更したほうが良いのでしょうか?ご教示いただけましたら幸いです。

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    3. 自転車店に修理で持ち込まれる自転車の中には、ハブが不調というものも少なくないと思うのですが、その場合でもホイールごと交換することで対応しているのかもしれませんね。もちろん玉押し1個から交換対応するという町の自転車店もあるにあるのでしょうけれども…。

      BBの軸長に関してですが、変速動作に問題がないのであればそのままで大丈夫でしょう。念のためリア4速の位置に入れて、スプロケの真後ろからチェーンラインを見て、チェーンがほぼ真っすぐであればOK、仮にギア1枚分ぐらいズレていたとしても大きな影響はないと思います。目視で2枚分以上ズレているような場合には、軸長もそれに合わせたほうが、全ギアをストレスなく使えて、より快適になります。

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    4. アドバイス有難うございます。

      4速の位置でチェーンラインが真っ直ぐになっておりました。現状にて不具合は無いものの、少し気になっておりました。アドバイスを頂き感謝いたします。

      ぽんたさんも仰っておられましたが、ひとくちに自転車店(プロ)と言っても技量や知識の差はあるのでしょうね、自転車店に限定した話ではありませんが・・・。また、あくまでも想像ですが、改造を得意としているお店であっても今回のようなケース(儲からない修理)はあまり歓迎されないような気がします・・・。

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    5. 銭勘定の部分は大きいのでしょうね。スポーツ車などメインに扱う、いわゆるプロショップと呼ばれる店ですら、スポーク2~3本の交換で済むところを、すべて交換とか、あるいはホイールごと交換になると言い放つところもあるらしいので…。技術的に出来ないというより、やはり儲けを考えているのでしょう。と言って、自転車店が不要だというわけでもないので、自分で出来ることは自分で、プロに任せるべきとろこはプロにと、賢く付き合っていくのが良いのかもしれません。

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